人生の指針になる一冊:Dear Book Dear Life

「糖尿病と脳卒中から学ぶ、家族と自己の再発見 - しなやかな生き方を提案するエッセイ集」



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「がんばる」主義から「いい加減」への転換

私たちの多くは、努力主義やがんばり過ぎることが美徳とされていた時代に育ちました。

それは、成長を促進する一方で、心と体に大きな負荷をもたらすこともあります。

今回ご紹介するエッセイ集『いいかげん』は、そんな「がんばる」主義を見直し、しなやかさや弱さを認める生き方を探る一冊です。

著者の鎌田實氏が描く実話を元にしたエッセイを通じて、私たちは「いい加減」に生きることの価値を見出すことができます。

暴飲暴食の果てに見えた家族の大切さ

一緒に物語を紐解いてみましょう。

あるサラリーマンは、仕事一筋の生活の中で抱えるストレス解消のために、暴飲暴食にふけっていました。

彼にとってそれは、日々の逃避手段であり、ストレスを一時的に忘れるためのものでした。

しかし、その結果として体は悲鳴を上げ、糖尿病を患うことになりました。

ここで初めて彼は、自分の健康が家族に与える影響の大きさに気づくのです。

それまで外では完璧に見えた彼の生活が、家庭内では崩壊への道を進んでいたことを理解しました。

病という壁に直面して初めて、彼は家族の大切さを再認識し、「がんばる」ではなく「いい加減」でもいい、家族と過ごす時間を優先する生き方を選ぶことの価値を見出したのです。

脳卒中からの再生と未来への希望

次に、私たちが出会うのは、脳卒中で入院した女性の物語です。

事故の後、彼女は体が思うように動かず、絶望感に打ちひしがれていました。

リハビリの過程で、彼女は何度も挫折を経験しましたが、その中で彼女を支えたのは彼女自身の持つ「柔軟さ」でした。

彼女がリハビリ中に「うれしい」と言った理由は、必ずしも身体機能の回復だけにあったわけではありません。

それは、自分が今できることを受け入れ、そこから小さな成果を見出すことができたからです。

完璧を求めるのではなく、日々の些細な進歩を喜ぶこと。

彼女は「いい加減」な考え方を持つことで、自分の未来に対する希望を再び取り戻すことができました。

夕張での医療センター設立の挑戦

財政再建団体となった夕張市で、一人の医師が取り組んだ挑戦。

それは、医療センターを立ち上げることでした。

経済的な困難を乗り越えるためには、切り詰める生活が求められましたが、ここで医師が目指したのは、単なる病院の設立ではなく、地域の人々と共に生きることのできる「いい加減」な医療の提供でした。

この「いい加減」には、無駄を削ぎ落としつつも、必要なサービスを的確に提供するという意味が込められています。

医師は、地域の人々が健康で笑顔でいられることを目指して、いかに効率的に医療を提供し、人々の心を軽くできるかを模索しました。

その結果、地域全体に活気が戻り、住民たちもまた医療センターを大切に思い始めました。

幸福を招く力を引き出すエッセイ集

本書が心に響くのは、個々の物語がどれも実際の経験を元にしているからこそです。

鎌田實氏は、日常の中で私たちが見落としがちな小さな幸せを丁寧に拾い上げ、エッセイという形で提示します。

これらの物語は、読み手に「最善を尽くすこと」ではなく、「今ある中で最高を見つけること」の大切さを教えてくれます。

エッセイ集『いいかげん』は、努力を美徳とし、何事にも全力投球することを求められる現代社会において、ひととき立ち止まって肩の力を抜くことの重要性を再確認させてくれます。

それはただの逃避ではなく、むしろ自分自身を取り戻し、幸福を再定義するためのプロセスです。

「いい加減」を実践する人たちの物語

本書を通じて紹介される各ストーリーには、さまざまな「いい加減」を実践する人々の姿があります。

それは決して無責任というわけではなく、現実的で柔軟なアプローチです。

時には立ち止まり、肩の力を抜くことができる人たちの共通した特徴として、彼らは自分自身の限界や弱さをしっかりと認め、必要であれば助けを求めることを恐れません。

このようなある意味でのしなやかさは、結果的に彼らをより強く、そして幸福な存在にしてくれます。

彼らは、自分たちの弱さを受け入れることで、他者との共感や連携を生み出し、より深いつながりを築くことができました。

このエッセイ集は、そういったしなやかで強い生き方を読者に示します。

まとめ:「いい加減」のすすめ

『いいかげん』は、日々の生活の中で見過ごされがちな身近な幸福を再認識させてくれる心温まるエッセイ集です。

仕事での完璧さや常に前を向くことだけが全てではないと教えてくれる本書は、私たちが抱えるストレスやプレッシャーから少し離れ、心を解放してくれます。

鎌田實氏の語る「いい加減」は、現代の忙しい生活の中で一瞬立ち止まり、自分自身を再確認するための大切なヒントを与えてくれます。

より柔軟で、あたたかな生活を目指す全ての人にとって、この本は一読の価値があります。




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2025年9月14日


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